シンプル対話

チームが変わる!メンバーの主体性を引き出すリーダーの声かけ

Tags: チームコミュニケーション, リーダーシップ, 主体性, 部下育成, 声かけ

チームメンバーの主体性を引き出すコミュニケーションの重要性

チームを率いる中で、「メンバーが指示待ちばかりで主体性がない」「もっと積極的に意見を出したり、自分で考えて動いてほしい」と感じることはありませんか。技術職からリーダーになった方にとって、指示を出すこと自体は得意でも、メンバーの内発的な動機を引き出し、自律的に行動を促すコミュニケーションは、新たな課題となりがちです。

現代のビジネス環境では、変化への迅速な対応や創造性が不可欠であり、指示を待つだけのチームでは、そのポテンシャルを最大限に発揮できません。メンバー一人ひとりが主体性を持って考え、行動することで、チーム全体のパフォーマンスは劇的に向上します。そして、この主体性を育む鍵こそが、リーダーの「コミュニケーション」なのです。

この記事では、チームメンバーの主体性を引き出すための具体的なコミュニケーション手法、明日からすぐに使えるフレーズ、そして実践的なケーススタディをご紹介します。これらのスキルを身につけることで、あなたのチームはより活発になり、メンバーは仕事へのやりがいをさらに感じられるようになるでしょう。

なぜ、メンバーの主体性が育たないのか?コミュニケーションの落とし穴

メンバーの主体性が育たない背景には、様々な要因がありますが、リーダーのコミュニケーションスタイルが影響しているケースは少なくありません。

主体性を引き出すコミュニケーションの原則

メンバーの主体性を育むためには、一方的な指示や評価ではなく、双方向でメンバーの内面に働きかけるコミュニケーションが不可欠です。以下の原則を意識することが重要です。

  1. 承認と傾聴: メンバーの存在や貢献を認め、彼らの話に真摯に耳を傾けることで、安心感と信頼関係が生まれます。「自分の意見を聞いてもらえる」「自分はチームの一員として認められている」と感じることが、主体性の基盤となります。
  2. 効果的な質問: 指示するのではなく、質問を通じてメンバー自身に考えさせる、気づきを促すことが重要です。「どうすればうまくいくと思う?」「この状況について、どう考えている?」といったオープンな質問が、内省と解決策の探求を促します。
  3. 目的と背景の共有: 単に「これをやって」と指示するのではなく、「なぜこれをやるのか」「この仕事がチームや顧客にどのような影響を与えるのか」といった目的や背景を共有することで、メンバーは仕事の意義を理解し、当事者意識を持つことができます。
  4. 適切な権限移譲と支援: メンバーのスキルレベルに合わせて、判断や実行の権限を委ねることで、「自分がこの仕事を任されている」という責任感とオーナーシップが生まれます。ただし、丸投げではなく、必要な情報やリソースを提供し、いつでも相談に乗る姿勢を示す「伴走型」の支援が不可欠です。
  5. 心理的安全性の確保: 失敗しても非難されない、率直に意見を言っても大丈夫だという心理的な安全性が確保されているチームでは、メンバーは安心して挑戦し、主体的に発言できるようになります。

すぐに使える!主体性を引き出す具体的なフレーズと会話例

これらの原則に基づき、日々のコミュニケーションで実践できる具体的なフレーズや会話例を見ていきましょう。

1. 承認と貢献への言及

メンバーの行動や貢献を具体的に承認することで、自己肯定感とチームへの貢献意欲を高めます。

2. 効果的な質問で考えを促す

メンバーに「考えさせる」ことを意識した質問を投げかけます。

3. 目的と背景を共有する伝え方

指示を出す際に、その「なぜ」を明確に伝えます。

4. 権限移譲と伴走支援のメッセージ

仕事を任せる際の言葉と、安心して挑戦できる環境づくりを伝える言葉です。

ケーススタディ:新しいプロジェクトを任せる場面

シナリオ設定

リーダーのあなたは、新しい顧客とのプロジェクト立ち上げを、チームの若手メンバーであるAさんに任せたいと考えています。Aさんは真面目ですが、まだ経験が浅く、自信なさげなところがあります。

従来のやり方(主体性を引き出しにくい例)

「Aさん、次の〇〇プロジェクト、君にやってもらうから。まずはこの仕様書を読んで、来週までに計画書を出して。やり方はこの前やった△△プロジェクトと同じでいいから。分からないことがあれば、適当に誰かに聞いて。」 → Aさん:「分かりました…(でも、やり方同じで本当に大丈夫かな?誰に聞けばいいんだろう…)」 → 自分で考えるより、言われたことだけをこなそうとする意識になりやすい。不安を一人で抱え込みやすい。

主体性を引き出すコミュニケーション(ロールプレイング例)

リーダー: 「Aさん、少し時間ある? 次の新しいお客様、〇〇株式会社さんとのプロジェクトの件なんだけど。」

Aさん: 「はい、大丈夫です。」

リーダー: 「ありがとう。実はこのプロジェクト、Aさんにメインで担当してもらいたいと考えているんだ。」

Aさん: 「私ですか? はい…」

リーダー: 「うん。〇〇株式会社さんは、私たちの新しいソリューションに大きな期待を寄せている重要なお客様なんだ。このプロジェクトを成功させることは、私たちのチームにとって、そして会社全体の成長にとってもすごく大きな意味がある。今回は、Aさんのこれまでのデータ分析の正確さと、粘り強く物事を進める力に期待しているんだ。」

Aさん: 「は、はい。ありがとうございます。」

リーダー: 「このプロジェクトをAさんに任せたい理由はもう一つあってね。Aさんには、これまでの経験を活かしつつ、新しい分野に挑戦してさらにスキルアップしてほしいと思っているんだ。このプロジェクトを通じて、きっと大きく成長できるはずだよ。」

Aさん: 「成長…」

リーダー: 「そこでお願いしたいのは、まずお客様の課題と私たちが提供できる価値について、Aさん自身で改めて整理してみてほしいんだ。その上で、このプロジェクトをどう進めるのがベストか、Aさんなりのアイデアを聞かせてほしい。仕様書はもちろん渡すけど、それに捉われすぎず、自由な発想で考えてみてほしいんだ。」

Aさん: 「自分で…考えてみるんですね。」

リーダー: 「そう。Aさんの視点での計画を聞かせてほしい。もちろん、初めてのことも多いと思うから、進める上で必要な情報や、困ったことがあれば、いつでも私やチームの皆を頼ってほしい。定期的に進捗状況を共有してもらえたら、必要なサポートをするからね。成功に向けて、一緒に取り組んでいこう。」

Aさん: 「はい!分かりました。精一杯やらせていただきます。」

このコミュニケーションのポイント

主体性がチームにもたらすポジティブな変化

メンバーの主体性が育つと、チームには多くの良い変化が訪れます。

まとめ:明日から始める主体性を引き出すコミュニケーション

チームメンバーの主体性を引き出すことは、一朝一夕にできるものではありません。しかし、日々のコミュニケーションの中で、今回ご紹介した原則や具体的なフレーズを意識し、実践することで、確実にチームの雰囲気とメンバーの意識は変わっていきます。

まずは、メンバーの話をいつもより少し丁寧に「聴く」ことから始めてみてください。そして、「あなたはどう思う?」「どうしたらもっと良くなるかな?」といった「問いかけ」を増やしてみてください。成功だけでなく、彼らの努力やプロセスにも目を向け、具体的に「承認」を伝えてください。

これらの小さな積み重ねが、メンバーの「自分で考え、行動する力」を育み、あなたのチームを、指示待ちではない、自律的で活力ある組織へと変えていくはずです。チームの成長を信じ、彼らの可能性を最大限に引き出すコミュニケーションを、ぜひ実践していきましょう。