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チームの信頼を深める!リーダーのための承認コミュニケーション

Tags: コミュニケーション, 承認, リーダーシップ, チームビルディング, モチベーション, 部下育成

メンバーのやる気を引き出す「承認」の力

チームを率いる中で、「どうすればメンバーはもっと主体的に動いてくれるだろうか?」「頑張っているのに、なかなか報われていると感じてもらえないのではないか?」といった悩みを抱えるリーダーは少なくありません。特に、技術職からリーダーになった方など、これまでの役割とは異なる「人」との関わりに難しさを感じることもあるかもしれません。

こうしたチームの活性化やメンバーのモチベーション向上において、非常に有効なコミュニケーション手法が「承認」です。承認は単に褒めることとは異なり、相手の存在や行動、成果を「認める」行為です。適切に行われる承認は、メンバーの自己肯定感を高め、チームへの貢献意欲を強め、結果としてチーム全体の信頼関係とパフォーマンス向上に繋がります。

この記事では、チームリーダーが実践できる承認の具体的な方法と、明日からすぐに使えるフレーズ、そしてケーススタディを通して、承認の力を最大限に引き出すヒントをお伝えします。

承認がチームにもたらす効果とは

リーダーからの適切な承認は、メンバーに以下のようなポジティブな影響を与えます。

これらの効果は、指示が通りやすくなったり、報連相が円滑になったり、チーム内の対立が減ったりと、日々のコミュニケーション課題の解決にも大きく貢献します。

承認の種類:何を見て「認める」か?

承認と一言で言っても、焦点を当てる対象によっていくつかの種類があります。これらをバランスよく使い分けることが重要です。

1. 結果承認(Achievement Recognition)

達成された成果や目標達成を認める承認です。「目標を達成した」「売上〇〇円を達成した」「プロジェクトを成功させた」といった、目に見える結果に対する承認です。

2. プロセス承認(Process Recognition)

成果に至るまでのプロセス、つまり努力、工夫、粘り強さ、貢献行動などを認める承認です。例えば、「〇〇の課題に対して粘り強く原因を究明してくれたこと」「難しい調整を根気強く進めてくれたこと」「新しいツール習得のために自主的に学習していたこと」などです。

3. 存在承認(Existence Recognition)

成果やプロセスに関わらず、その人が「そこにいること」「チームの一員であること」自体を認める承認です。「いつも遅くまでありがとう」「〇〇さんがいてくれて助かるよ」「体調は大丈夫?」といった、日頃の声かけや気遣い、その人の存在そのものへの感謝などを含みます。

これら3つの承認を、状況やメンバーの特性に応じて適切に使い分けることが、効果的な承認コミュニケーションの鍵となります。特に、目に見えにくいプロセスや、日々の存在への承認は、メンバーの安心感と信頼感を育む上で非常に重要です。

明日から使える!具体的な承認フレーズ集

承認を効果的に行うためには、具体的な状況に合わせて、どのような言葉で伝えるかが重要です。ここでは、いくつかのシーンで使えるフレーズ例をご紹介します。

ケース1:期限内に難しいタスクを完了したメンバーへ(結果+プロセス承認)

ケース2:新しい業務やツール習得に苦労しながらも取り組んでいるメンバーへ(プロセス承認)

ケース3:チームのために率先して雑務やサポートを買って出たメンバーへ(プロセス+存在承認)

ケース4:日頃から安定して真面目に業務に取り組んでいるメンバーへ(存在+プロセス承認)

ポイント: * 「〇〇さん」と個人名を呼ぶ。 * 具体的に「何を」承認するのかを明確にする(「頑張ったね」だけでなく、「〇〇の△△のところが頑張りだったね」)。 * その行動や存在が「チームにとって」「私にとって」どういう価値があったのかを伝える。 * リーダー自身の感情や感謝の気持ちを添える(「助かったよ」「ありがとう」「頼りにしている」など)。 * できるだけタイムリーに伝える。

NGな承認と避けるべき表現

せっかく承認しても、伝え方によっては逆効果になることもあります。以下のような表現は避けるようにしましょう。

ケーススタディ:承認で変わるチームの雰囲気

ある中小企業の開発チームでは、新しいシステムの納期が迫り、メンバーに疲労の色が見え始めていました。リーダーのAさんは、以前は成果に対してのみ評価の言葉をかけていましたが、最近コミュニケーション研修で承認の重要性を学んだことを思い出し、意識的に承認を取り入れることにしました。

【状況】 * メンバーのBさんが、通常業務に加え、新しいシステムの開発で設計上の難しい課題に直面し、残業して解決策を探している。 * チーム全体にピリピリした空気が流れ始めている。

【Aさんの以前の対応】 「Bさん、あの設計の件、早く目処をつけてくれる?納期がないんだから。」(結果・納期へのプレッシャー)

【Aさんの新しい対応(承認を取り入れる)】 AさんはBさんの席に行き、声をかけました。

「Bさん、遅くまでお疲れ様です。あの設計の課題、かなり難しいのに、根気強く原因を探ってくれてるのが伝わってきます。大変な時だと思うけど、その粘り強さ、本当に助かるし、チームの模範になっていますよ。何か手伝えることや、話し相手が必要ならいつでも言ってくださいね。」

【結果】 Bさんは少し驚いた様子でしたが、「ありがとうございます。もう少しで光が見えそうなので頑張ります!」と、少し表情が和らぎました。Aさんは他のメンバーにも、設計レビューのために資料を早めに準備してくれたこと、会議室の片付けを率先して行ってくれたことなど、小さな貢献も見つけて声をかけるようにしました。

数日後、チームの雰囲気は以前より柔らかくなり、メンバー同士で声をかけ合う姿も増えました。Bさんも無事課題を解決し、システム開発は納期に間に合いました。Aさんは、承認が単なるおべんちゃらではなく、メンバーのモチベーションとチームの連帯感を高める強力なツールであることを実感しました。

承認を日常の習慣にするために

承認は、特別な時に行うものではなく、日々のコミュニケーションの中で自然に行われることが理想です。そのために、以下のことを意識してみてください。

  1. 「承認センサー」をオンにする: メンバーの行動や発言を、意図的に「承認できるポイントはないか?」という視点で観察する習慣をつける。
  2. まずは小さなことから: 大げさな成果だけでなく、日々の小さな努力や貢献、存在そのものに対する感謝など、些細なことから承認してみる。
  3. 定例ミーティングで取り上げる: チームミーティングの冒頭などで、「今週のGood & Thanks」のように、メンバー間の承認をシェアする時間を設ける。
  4. フィードバックと組み合わせる: 改善点を伝える際にも、必ず良い点(承認できる点)をセットで伝えるようにする(ただし、「〜だけど」を使わない)。
  5. 自己承認も大切に: 自分の頑張りやチームへの貢献も自分で認め、自信を持つことが、メンバーへの自然な承認に繋がります。

まとめ

チームリーダーにとって、メンバーへの承認は、単に気分を良くさせるためだけではなく、チームのパフォーマンスを高め、信頼関係を築くための重要なコミュニケーションスキルです。結果だけでなく、プロセスや存在そのものを認め、具体的でタイムリーに伝えることで、メンバーは「自分はチームに必要な存在だ」「自分の努力は無駄ではない」と感じることができます。

今日から、あなたのチームでも「承認センサー」をオンにして、メンバーの素晴らしい部分を見つけ、言葉にして伝えてみませんか。その小さな一歩が、チームの信頼を深め、より強く、より一体感のあるチームへと繋がるはずです。