チームメンバーの「本音」を引き出す!リーダーが作る心理的安全性の高い話しやすい場
チームメンバーの本音、引き出せていますか?
チームを率いるリーダーとして、メンバーとのコミュニケーションに課題を感じることは少なくないかもしれません。特に、「メンバーが本音を話してくれない」「意見を求めても反応が薄い」「何か問題があっても自分から報告してこない」といった悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
メンバーの本音や多様な意見が出てこないチームは、課題の早期発見が遅れたり、新しいアイデアが生まれにくかったり、改善の機会を逃したりする可能性があります。結果として、チームのパフォーマンスが停滞してしまうことも考えられます。
では、どうすればメンバーが安心して自分の考えや気持ちを話せるような、風通しの良いチームを作れるのでしょうか。鍵となるのは、「心理的安全性」の高い環境を作り出すことです。本記事では、チームの心理的安全性を高め、メンバーから自然と本音や意見を引き出すためのコミュニケーションの具体的な方法と、すぐに使える実践的なヒントをご紹介します。
なぜ、チームで本音が出にくいのか?心理的安全性の低いサイン
メンバーが本音を話さない背景には、いくつかの理由が考えられます。
- 否定されることへの不安: 自分の意見を言ったら、否定されたり、馬鹿にされたりするのではないかという恐れ。
- 失敗への恐れ: 自分のアイデアや行動が失敗した場合に、責められるのではないかという不安。
- 「どうせ言っても無駄だ」という諦め: 過去に意見を言っても聞き入れられなかった、状況が変わらなかったという経験。
- 上司や周囲への配慮: リーダーや他のメンバーの気分を損ねたくないという気持ち。
- 自分には関係ないという無関心: チームへのエンゲージメントが低く、積極的に関わろうという気持ちがない。
このような状況が続くと、チームの心理的安全性は低くなります。心理的安全性が低いチームでは、以下のようなサインが見られます。
- 会議やミーティングで特定のメンバーしか発言しない、あるいは誰も積極的に意見を言わない
- 問題が発生しても、隠されたり報告が遅れたりする
- 質問や相談が少なく、表面的な「ほうれんそう」に終始する
- 新しい提案や改善のアイデアが出にくい
- メンバー間の相互協力や情報共有が少ない
もし、あなたのチームでこれらのサインが見られるなら、それはリーダーとしてメンバーの心理的安全性を高めるコミュニケーションを意識する必要があるサインかもしれません。
心理的安全性を高めるリーダーのコミュニケーション実践術
心理的安全性の高い場を作るためには、リーダー自身のコミュニケーションの質が非常に重要です。ここでは、明日からすぐに実践できる具体的な方法をいくつかご紹介します。
1. 徹底した「傾聴」の姿勢を示す
メンバーが「このリーダーは自分の話をしっかり聞いてくれる」と感じることが、安心して話すための第一歩です。
- アクティブリスニングの実践:
- 相手の話に集中し、目を見て聞きます。
- 相槌やうなずきを効果的に使います。
- 相手の言葉を繰り返したり、要約したりして、理解したことを伝えます。
- 途中で話を遮らず、最後まで聞きます。
- すぐに使える傾聴フレーズ例:
- 「なるほど、〇〇ということですね。」
- 「つまり、△△だとお感じなんですね。」
- 「もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」
- 「そのとき、どう思われましたか?」
2. 本音を引き出す「質問力」を磨く
一方的に指示や質問をするのではなく、メンバーの内にある考えや情報を引き出すための質問を意識します。
- オープンクエスチョンを活用する:
- 「はい」「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンだけでなく、「何が」「どのように」「どんな」「どのような」といったオープンクエスチョンを使い、自由に話してもらう余地を作ります。
- 「なぜ?」に代わる質問:
- 「なぜ遅れたんだ?」のように「なぜ?」で聞くと、責められていると感じさせてしまうことがあります。「何が原因だったんだろうね?」「どうすれば次はスムーズに進められるかな?」のように、原因究明や改善に焦点を当てた質問にします。
- 意見や感情を引き出す質問例:
- 「この状況について、皆さんはどう思いますか?」
- 「何か懸念している点はありますか?」
- 「もっと良くするためには、どんなことができると思いますか?」
- 「率直な意見を聞かせてもらえませんか?」
3. リーダー自身の「弱さ」を開示する勇気を持つ
リーダーが完璧である必要はありません。時には自分の悩みや不安を正直に話すことで、メンバーは「リーダーも人間なんだ」「自分も完璧でなくていいんだ」と感じ、安心感を持ちやすくなります。
- 弱みや迷いを正直に伝えるフレーズ例:
- 「実は、この件についてどう進めるか少し悩んでいるんだ。皆の意見を聞かせてほしい。」
- 「正直言って、この分野は私も詳しくなくて。ぜひ君の知見を借りたいんだ。」
- 「うまくいかなかったらどうしよう、という不安も少しあるんだけど、一緒にチャレンジしてみないか?」
4. 失敗や異なる意見に対する肯定的なフィードバック
失敗や多数派と異なる意見を表明したときに、否定的な反応をしないことが極めて重要です。
- 意見や提案への反応:
- まず、「アイデアありがとう」「考えてくれて嬉しいよ」のように、提案してくれた行為自体を承認します。
- 意見の内容に賛同できなくても、「なるほど、そういう考え方もあるんですね」「面白い視点ですね」のように、一度受け止める姿勢を示します。
- すぐに否定せず、質問を投げかけて掘り下げたり、他の選択肢と比較検討する対話に持ち込んだりします。
- 失敗への対応:
- 失敗そのものを責めるのではなく、「この件から何を学べただろうか?」「次に活かすために、どうすれば良かっただろうか?」のように、学びや改善に焦点を当てた対話を促します。
- 「失敗は成功のもと」「チャレンジしたことを評価する」といったメッセージを日頃から伝えます。
具体的な実践シーン別アプローチ
ここでは、実際の職場で起こりうる状況を想定したコミュニケーション例をご紹介します。
ケーススタディ1:会議で意見がほとんど出ない場合
状況: 新しいプロジェクトの方向性について話し合うチームミーティング。リーダーがメンバーに意見を求めても、「特にありません」「皆さんの意見に賛成です」といった消極的な反応しか返ってこない。
考えられる原因: * 普段から自由に発言できる雰囲気がない。 * 意見を言っても反映されないと感じている。 * テーマが抽象的すぎて、具体的にどう考えればいいか分からない。 * 他のメンバーの反応が気になって、発言をためらっている。
リーダーの働きかけ例:
- 導入:
- 「今日は、この新しいプロジェクトのアイデア出しをお願いしたいと思っています。どんな小さなことでも、普段感じていることでも構いません。皆さんが自由にアイデアや懸念を出し合える時間にしたいので、気軽に発言してください。」(目的と安心感を先に伝える)
- 発言のハードルを下げる:
- 「まずは簡単なアイデアでも構いません。例えば、以前のプロジェクトで『こうだったら良かったな』と感じたことでもいいですし、今回の件で『なんとなく気になる』といった漠然としたものでも構いません。」(具体的なテーマ例やハードルの低い例を示す)
- 「発言に善し悪しはありません。どんな意見もチームにとって大切なヒントになります。」(評価への不安を軽減)
- 具体的な質問を投げかける:
- 「このプロジェクトで、一番成功させたいポイントは何だと思いますか?」
- 「逆に、一番リスクになりそうだと感じるのはどんな点でしょう?」
- 「もしお客様の立場だったら、何が一番嬉しいかな?」
- (漠然とした問いではなく、具体的な視点を示す)
- 少人数での対話を促す:
- 全体で発言しにくい場合は、「では、まず3人ずつグループに分かれて、それぞれアイデアを出し合ってみましょう。出てきたアイデアを後で共有してもらえれば大丈夫です。」(小さな単位で話しやすくする)
会話例(ロールプレイング風):
リーダー:「さて、この新しいプロジェクト、どんな方向性で進めていくか、皆さんの考えを聞かせてほしいんですが。何かアイデアや、気になる点はありますか?」
(沈黙...)
リーダー:「ありがとうございます。少し考えている時間が必要かもしれませんね。例えば、このプロジェクトで特に注力すべき点はどんなことだと思いますか?あるいは、過去の経験から『これは気をつけた方がいいな』と感じることはありますか?」
メンバーA:「うーん、そうですね…。なんとなく、スケジュールが結構タイトになるのかな、という気はしています。」
リーダー:「あ、ありがとうございます。スケジュールがタイトになりそうだと感じているんですね。具体的に、どの部分が特に懸念されますか?過去のプロジェクトで大変だったこととか、何か具体的なイメージがあれば教えてもらえますか?」(傾聴し、具体的な質問で掘り下げる)
メンバーA:「そうですね、特に〇〇の工程がいつも予想以上に時間がかかるので、今回も心配です。」
リーダー:「なるほど、〇〇の工程ですね。貴重なご意見ありがとうございます。皆さんは、この〇〇の工程について、何かアイデアや、他の懸念はありますか?どんな小さなことでも構いません。」(他のメンバーにも投げかける)
メンバーB:「〇〇の工程であれば、以前△△を試したチームがあったと聞きました。もしかしたら参考になるかもしれません。」
リーダー:「おお、△△の事例ですね!ありがとうございます。それは興味深いです。メンバーBさん、もしその情報について何かご存知でしたら、後で少し教えてもらえませんか?」(具体的な提案を拾い上げ、行動に繋げる)
このように、リーダーが積極的に働きかけ、発言しやすい雰囲気を作り、具体的な質問を投げかけることで、少しずつ本音や意見を引き出していくことができます。
ケーススタディ2:部下が課題を抱え込んでいるらしい場合
状況: ある部下が、最近仕事の進捗が悪く、どこか元気がないように見える。話しかけても「大丈夫です」と答えるが、何か問題を抱えている可能性がある。
考えられる原因: * 業務上のスキルや知識が足りていない。 * タスク量が多く、一人で抱え込んでいる。 * 他のメンバーとの関係性に悩んでいる。 * プライベートで何か問題を抱えている。 * 相談したくても、どう切り出していいか分からない。
リーダーの働きかけ例:
- タイミングと場所を選ぶ:
- 忙しい時間帯や他のメンバーが大勢いる場所を避け、落ち着いて話せる機会を作ります。(例:休憩時間、終業前、別室など)
- プレッシャーを与えない声かけ:
- 「何か問題があるでしょう?」と決めつけるのではなく、相手を気遣う姿勢を見せます。
- すぐに仕事の話ではなく、「最近どう?」といった軽い世間話から入るのも有効です。
- 「いつでも相談に乗る」という姿勢を示す:
- 直接的な課題解決の提案よりも、まずは話を聞く準備があることを伝えます。
会話例(ロールプレイング風):
リーダー:「(部下の様子を見て)〇〇さん、最近少し疲れているように見えるけど、大丈夫?何か気になることでもある?」
部下:「あ、いえ、大丈夫です。ちょっと立て込んでいるだけです。」
リーダー:「そうか。でも、少し顔色が優れないように見えたから気になって。もし、何か困っていることや、一人で抱え込んでいることがあるなら、遠慮なく相談してほしいんだ。業務のことでも、それ以外の些細なことでも構わないから。」(心配している気持ちと、相談してほしい意図を伝える)
部下:「(少し間を置いて)…実は、今担当している△△の件で、少し難航していまして。」
リーダー:「△△の件か。うんうん。(相槌を打ちながら)具体的に、どんなところが難航しているか聞かせてもらえる?もしかしたら、一緒に解決策を考えられるかもしれない。」(傾聴の姿勢を示し、具体的な内容を聞き出す)
部下:「はい…。実は、〜〜という問題が起きていて、どう対応すればいいか分からなくなってしまって。」
リーダー:「そうだったんだね。それは大変だったね。(共感を示しつつ)状況はよく分かったよ。一人で悩ませてしまって申し訳ない。この件について、一緒に解決策を考えてみよう。他のメンバーの知恵も借りることもできるしね。」(ねぎらい、一緒に解決する姿勢を見せる)
このように、相手を気遣う温かい声かけと、いつでも話を聞くという安心感を与えることが、本音を引き出すきっかけとなります。
まとめ:心理的安全性はリーダーが作る基盤
チームメンバーが本音で話し、活発に意見を交換できる環境は、一朝一夕にできるものではありません。それは、リーダーが日々のコミュニケーションを通じて、メンバー一人ひとりが「ここでなら安心して自分を出せる」「たとえ失敗しても、否定されずに次につながる対話ができる」と感じられるような心理的安全性の基盤を築いていくことから始まります。
今回ご紹介した「傾聴」「質問力」「弱さの開示」「失敗や異なる意見への肯定的な対応」は、そのための強力なツールです。ぜひ、明日からの職場で、意識してこれらのコミュニケーションを実践してみてください。
最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、継続することでメンバーとの間に信頼関係が築かれ、少しずつチームの雰囲気は変わっていくはずです。メンバーの本音は、チームが抱える課題を明らかにし、より良い方向へ進むための大切な羅針盤です。リーダーとしてその羅針盤を受け取り、チームをさらなる高みへ導いていきましょう。